激しいトレーニングとパフォーマンスは、⾻格筋の損傷と炎症を引き起こします。トレーニング後の⾻格筋のパフォーマンスは、激しいトレーニングセッションの後に減少し、回復には時間を要するとされています。
⾃⼰脂肪由来幹細胞を活⽤することで、ケガやトレーニングによって炎症が⽣じ、損傷した筋⾁の修復、さらには筋⾁量の増加を期待することができます。

この治療では、患者様ご⾃⾝の脂肪から採取した幹細胞を培養・増殖させ、症状のある部位・増⼤したい筋⾁の部位に局所注射で投与します。幹細胞は傷ついた組織・炎症を起こしている組織に集まり(ホーミング効果)、強⼒な抗炎症効果を発揮しながら修復を促します。
また、幹細胞が分泌する成分(パラクライン効果)によって、次のような働きが期待されます。
- 傷んだ筋⾁や腱、靭帯、筋膜を修復する
- 慢性炎症による痛みや不調をやわらげる
- ⾎流を改善し、組織の回復を助ける
- 筋線維の成⻑を促し、筋⼒・筋量の増加をサポートする
- 組織の過度な瘢痕化(硬くなること)を防ぐ
これらの作⽤により、⾃⼰脂肪由来幹細胞は、慢性的な軟部組織の痛みやパフォーマンス低下、トレーニング効果の低下に悩む⽅に対し、体の機能回復・向上と⽣活の質(QOL)の向上をもたらすことが期待されます。
筋⾁や腱、靭帯、筋膜の損傷や慢性炎症に対しては、リハビリテーション、薬物療法(消炎鎮痛薬・ステロイド)、注射治療(ヒアルロン酸など)などが⾏われています。これらは⼀時的な痛みの緩和や炎症の抑制には⼀定の効果があるものの、損傷組織そのものを根本的に修復する治療法ではありません。
⾃⼰脂肪由来幹細胞を⽤いた治療は、炎症を抑えつつ損傷した組織の再⽣を促す、根本的な機能回復・向上を⽬指す再⽣医療です。従来の治療で改善が得られにくかった筋⾁の損傷に伴う症状に対しても、新たな治療選択肢となることが期待できます。
本治療では、患者さまのお腹や太ももなどから10g 程度脂肪を採取し、同時に細胞培養に必要な⾎清成分を抽出するため、患者様のご希望に応じて採⾎(約10〜60mL)を⾏い、当院が提携する細胞培養加⼯施設にて幹細胞を培養・増殖させます。
増やした幹細胞を局所注⼊で戻すことで、成⻑因⼦の分泌や細胞の活性化を介して組織の修復と抗炎症作⽤を促進し、筋損傷の改善や筋⾁増⼤の効果が期待できます。


幹細胞治療の流れ
診察
幹細胞治療を希望される患者様は、問診をさせていただき、治療の適応があるかどうかの診断を⾏います。すでに他の医療機関で診察などを受けている場合は、その内容を伺わせていただきます。
治療同意
治療に適応があり医師の説明に同意いただけましたら、治療と採血のスケジュールを決定します。
採血は脂肪採取予定日の3か月~2週間前に行いますが、すでにこの期間で実施済みでしたら行いません。
※必要な検査項目を満たしているか医師に確認してください。
脂肪採取
患者様が希望された脂肪採取日に来院していただきます。局所麻酔を行って皮下脂肪を採取します。採取自体は短時間で終了し、入院の必要はなく日帰りで行えます。
細胞培養
委託先の細胞培養加工施設に採取した脂肪を送り4〜6週間培養を行います。輸送中の脂肪は専用ボックスを使用し温度管理をします。また培養期間中も状況のモニタリングや、感染の検査などを行い厳重に管理されます。
凍結保存
治療プランの細胞数まで培養が終わるといったん-150°の超低温で凍結保存します。
投与
ご希望の投与日に来院していただきます。施術は通常の点滴と同じです。
一度解凍された細胞は保存ができないため、予定日に来られない場合は細胞を破棄することになります。確実にご来院できる日を選択してください。
経過観察
投与後、1か月後、3か月後、6か月後を目安に痛みの評価や、画像の評価を行い治療の経過をフォローアップします。
考えられる合併症と副作⽤(幹細胞治療)
・脂肪採取時:感染、⽪下⾎腫(程度により腹部⽪膚の⾊素沈着)、創部からの出⾎、貧⾎、創部の疼痛・腫脹(はれ)、アナフィラキシー反応、腹膜穿孔など
・細胞投与時:感染、アナフィラキシー反応、肺塞栓(注⼊した細胞による肺⾎管の閉塞、症状が重いと呼吸困難症状)、穿刺部の痛み、内出⾎、神経障害(⼿⾜の痺れなど)など
自家培養上清
あなただけの、培養上清
脂肪由来幹細胞と併せて、⾃家培養上清による治療を併せて⾏うことができます。
広く普及している培養上清は、他⼈の幹細胞を培養した際に得られた上澄み液(=他家)ですが、「⾃家」培養上清とは、「ご⾃⾝の」幹細胞を培養して作られた上澄み液です。
ご⾃⾝のものですので、「安⼼・安全」に治療を受けることができます。
培養上清には様々な成⻑因⼦(PDGF、EGF、VEGFなど)を含むだけでなく、NK細胞やマクロファージの機能を調節することによる抗炎症作⽤を有します。
幹細胞治療と併せて⾏うことで、さらなる相乗的な効果が期待できます。
考えられる合併症と副作⽤(自家培養上清)
感染、アレルギー、穿刺部の痛み、内出⾎、神経障害(⼿⾜の痺れなど)など