フレイルとは、加齢や慢性的な疾患によって筋⼒や体⼒、免疫機能が低下し、⽇常⽣活の中で転倒や疲労を感じやすくなるなど、⾝体的・精神的・社会的な活⼒が減退した状態を指します。この状態を放置すると、要介護状態へ進⾏するリスクが⾼まるため、早期の対策が重要です。
フレイルの基準には、さまざまなものがありますが、⽇本⽼年医学会が提唱する⼀般的なフレイルの基準には以下の5項⽬があり、3項⽬以上該当するとフレイル、1または2項⽬だけの場合にはフレイルの前段階であるプレフレイルと判断します。

- 体重減少:意図しない年間4.5kgまたは5%以上の体重減少
- 疲れやすい:何をするのも⾯倒だと週に3-4⽇以上感じる
- 歩⾏速度の低下
- 握⼒の低下
- ⾝体活動量の低下

フレイルについては多くの研究が進められており、有酸素運動、カロリーサポート、ビタミンD等を⽤いた治療が知られていますが、特定の治療法はまだ知られていません。これらの治療の利益としては、 費⽤が安く侵襲を伴わない点ですが、不利益としては、継続しにくいことや効果が持続しないこと等が挙げられます。
本治療は、患者さまご⾃⾝の脂肪から採取した「⾃家脂肪由来幹細胞(間葉系幹細胞)」を活⽤し、プレフレイル・フレイルの改善を⽬指す治療法です。
幹細胞には、筋⾁や組織の修復や再⽣を促し、炎症や酸化ストレスを強⼒に抑える作⽤があります。⾃家脂肪由来幹細胞は、弱り、傷ついた組織や炎症部位に集まり(ホーミング能⼒)、慢性炎症を抑えつつ、損傷した組織を修復する働きがあります。また、⾃⼰脂肪由来幹細胞は分泌する⽣理活性物質(サイトカイン・成⻑因⼦・エクソソームなど)によるパラクライン効果を通じて、免疫調整効果、⾎流改善効果を発揮し、筋⾁や⾻の再⽣を促進します。
この特性を活かし、筋⼒の低下、持久⼒の減少、疲労感といったフレイルおよびプレフレイルの症状を包括的に改善し、加齢や疾患による⾝体機能の低下を根本的に改善し、患者さまの⽣活の質(QOL)向上を⽬指します。投与により、介護状態になるリスクが低減するという報告もあります。
本治療では、患者さまのお腹や太ももなどから10g 程度脂肪を採取し、同時に細胞培養に必要な⾎清成分を抽出するため、患者様のご希望に応じて採⾎(約10〜60mL)を⾏い、当院が提携する細胞培養加⼯施設にて幹細胞を培養・増殖させます。増やした幹細胞を点滴で体内に戻すことで、成⻑因⼦の分泌や細胞の活性化を介して組織の修復と抗炎症作⽤を促進し、⾝体の加齢性変化(フレイルおよびプレフレイル)の改善が期待できます。


幹細胞治療の流れ
診察
幹細胞治療を希望される患者様は、問診をさせていただき、治療の適応があるかどうかの診断を⾏います。すでに他の医療機関で診察などを受けている場合は、その内容を伺わせていただきます。
治療同意
治療に適応があり医師の説明に同意いただけましたら、治療と採血のスケジュールを決定します。
採血は脂肪採取予定日の3か月~2週間前に行いますが、すでにこの期間で実施済みでしたら行いません。
※必要な検査項目を満たしているか医師に確認してください。
脂肪採取
患者様が希望された脂肪採取日に来院していただきます。局所麻酔を行って皮下脂肪を採取します。採取自体は短時間で終了し、入院の必要はなく日帰りで行えます。
細胞培養
委託先の細胞培養加工施設に採取した脂肪を送り4〜6週間培養を行います。輸送中の脂肪は専用ボックスを使用し温度管理をします。また培養期間中も状況のモニタリングや、感染の検査などを行い厳重に管理されます。
凍結保存
治療プランの細胞数まで培養が終わるといったん-150°の超低温で凍結保存します。
投与
ご希望の投与日に来院していただきます。施術は通常の点滴と同じです。
一度解凍された細胞は保存ができないため、予定日に来られない場合は細胞を破棄することになります。確実にご来院できる日を選択してください。
経過観察
投与後、1か月後、3か月後、6か月後を目安に痛みの評価や、画像の評価を行い治療の経過をフォローアップします。
考えられる合併症と副作⽤(幹細胞治療)
・脂肪採取時:感染、⽪下⾎腫(程度により腹部⽪膚の⾊素沈着)、創部からの出⾎、貧⾎、創部の疼痛・腫脹(はれ)、アナフィラキシー反応、腹膜穿孔など
・細胞投与時:感染、アナフィラキシー反応、肺塞栓(注⼊した細胞による肺⾎管の閉塞、症状が重いと呼吸困難症状)、穿刺部の痛み、内出⾎、神経障害(⼿⾜の痺れなど)など
自家培養上清
あなただけの、培養上清
脂肪由来幹細胞と併せて、⾃家培養上清による治療を併せて⾏うことができます。
広く普及している培養上清は、他⼈の幹細胞を培養した際に得られた上澄み液(=他家)ですが、「⾃家」培養上清とは、「ご⾃⾝の」幹細胞を培養して作られた上澄み液です。
ご⾃⾝のものですので、「安⼼・安全」に治療を受けることができます。
培養上清には様々な成⻑因⼦(PDGF、EGF、VEGFなど)を含むだけでなく、NK細胞やマクロファージの機能を調節することによる抗炎症作⽤を有します。
幹細胞治療と併せて⾏うことで、さらなる相乗的な効果が期待できます。
考えられる合併症と副作⽤(自家培養上清)
感染、アレルギー、穿刺部の痛み、内出⾎、神経障害(⼿⾜の痺れなど)など