糖尿病に対しては、運動療法や⾷事管理、薬物療法など多くの治療が⾏われており、これらは⾎糖コントロールや合併症予防に⼀定の効果があるとされています。しかし、これらの治療は継続が難しかったり、根本的な機能回復には⾄らないという課題もあります。
幹細胞にはもともと傷ついたり数が減った細胞の代わりとなり、体の機能を補ったり修復するよう働きかける能⼒があります。幹細胞は普段は活動していませんが、周囲の細胞から危険を知らせるシグナルを感じると細胞分裂・分化を開始し、弱った細胞の近くに集まり(ホーミング効果)修復しようとします。
また、幹細胞からはサイトカイン・成⻑因⼦・エクソソームなどの物質が多く分泌されます。投与した周囲の細胞を増やしたり、周囲の細胞の活動性を向上させる効果に加え、強⼒な「抗炎症効果」を有します。この幹細胞の持つ、抗炎症効果や、損傷した組織や臓器を修復して元に戻そうとする能⼒を利⽤したのが幹細胞を使った再⽣医療です。

脂肪由来幹細胞を⽤いた再⽣医療
当院では、糖尿病に対して、ご⾃⾝の脂肪由来幹細胞を⽤いた再⽣医療を提供します。患者様ご⾃⾝の脂肪から採取した幹細胞を体外で培養・増殖させ、点滴により体内へ戻すことで、慢性炎症の改善や組織修復、インスリン抵抗性の改善を促します。つまり、⾎糖コントロールだけでなく、体の根本的な機能改善を⽬指す再⽣医療です。
幹細胞は、膵臓や筋⾁、⾎管などの傷ついた組織に集まり(ホーミング効果)、炎症を抑えながら組織の修復を促します。幹細胞が分泌する成⻑因⼦や免疫調整因⼦の働きにより、糖尿病の原因となる慢性炎症、代謝異常や臓器障害に多⾯的にアプローチし、糖尿病の進⾏抑制や合併症の予防、ひいては⽣活の質(QOL)の改善が期待される新しい治療⽅法と⾔えます。具体的には、下記のような効果が期待できます。
- インスリンの効きを良くする
- 膵臓の働きを守る
- ⾎流を改善する
- 神経障害をやわらげる
- 炎症を抑える


幹細胞治療の流れ
診察
幹細胞治療を希望される患者様は、問診をさせていただき、治療の適応があるかどうかの診断を⾏います。すでに他の医療機関で診察などを受けている場合は、その内容を伺わせていただきます。
治療同意
治療に適応があり医師の説明に同意いただけましたら、治療と採血のスケジュールを決定します。
採血は脂肪採取予定日の3か月~2週間前に行いますが、すでにこの期間で実施済みでしたら行いません。
※必要な検査項目を満たしているか医師に確認してください。
脂肪採取
患者様が希望された脂肪採取日に来院していただきます。局所麻酔を行って皮下脂肪を採取します。採取自体は短時間で終了し、入院の必要はなく日帰りで行えます。
細胞培養
委託先の細胞培養加工施設に採取した脂肪を送り4〜6週間培養を行います。輸送中の脂肪は専用ボックスを使用し温度管理をします。また培養期間中も状況のモニタリングや、感染の検査などを行い厳重に管理されます。
凍結保存
治療プランの細胞数まで培養が終わるといったん-150°の超低温で凍結保存します。
投与
ご希望の投与日に来院していただきます。施術は通常の点滴と同じです。
一度解凍された細胞は保存ができないため、予定日に来られない場合は細胞を破棄することになります。確実にご来院できる日を選択してください。
経過観察
投与後、1か月後、3か月後、6か月後を目安に痛みの評価や、画像の評価を行い治療の経過をフォローアップします。
考えられる合併症と副作⽤(幹細胞治療)
・脂肪採取時:感染、⽪下⾎腫(程度により腹部⽪膚の⾊素沈着)、創部からの出⾎、貧⾎、創部の疼痛・腫脹(はれ)、アナフィラキシー反応、腹膜穿孔など
・細胞投与時:感染、アナフィラキシー反応、肺塞栓(注⼊した細胞による肺⾎管の閉塞、症状が重いと呼吸困難症状)、穿刺部の痛み、内出⾎、神経障害(⼿⾜の痺れなど)など
自家培養上清
あなただけの、培養上清
脂肪由来幹細胞と併せて、⾃家培養上清による治療を併せて⾏うことができます。
広く普及している培養上清は、他⼈の幹細胞を培養した際に得られた上澄み液(=他家)ですが、「⾃家」培養上清とは、「ご⾃⾝の」幹細胞を培養して作られた上澄み液です。
ご⾃⾝のものですので、「安⼼・安全」に治療を受けることができます。
培養上清には様々な成⻑因⼦(PDGF、EGF、VEGFなど)を含むだけでなく、NK細胞やマクロファージの機能を調節することによる抗炎症作⽤を有します。
幹細胞治療と併せて⾏うことで、さらなる相乗的な効果が期待できます。
考えられる合併症と副作⽤(自家培養上清)
感染、アレルギー、穿刺部の痛み、内出⾎、神経障害(⼿⾜の痺れなど)など