慢性疼痛とは「治療に要すると期待される時間の枠を超えて持続する痛み、あるいは進⾏性の⾮がん性疼痛に基づく痛み」と定義されています。多くの⽅が慢性疼痛に悩まされており、⽇本では約4⼈に1⼈が慢性疼痛を抱えているといわれています。

⼀般的には、下記のいずれかに当てはまるような痛みが、「慢性疼痛」とみなされます。

慢性疼痛の治療法は対症療法(鎮痛薬の内服・外⽤・注射など)が主であり、⼿術療法などの根治療法がないのが現状で、⼗分な疼痛の緩和を得られなかったり、副作⽤などによって継続ができなくなることがあります。代替的な新しい治療⽅法として、幹細胞を使⽤した再⽣医療が注⽬されています。

幹細胞にはもともと傷ついたり数が減った細胞の代わりとなり、体の機能を補ったり修復するよう働きかける能⼒があります。幹細胞は普段は活動していませんが、周囲の細胞から危険を知らせるシグナルを感じると細胞分裂・分化を開始し、弱った細胞の近くに集まり(ホーミング効果)修復しようとします。

また、幹細胞からはサイトカイン・成⻑因⼦・エクソソームなどの物質が多く分泌されます。投与した周囲の細胞を増やしたり、周囲の細胞の活動性を向上させる効果に加え、強⼒な「抗炎症効果」を有します。この幹細胞の持つ、抗炎症効果や、損傷した組織や臓器を修復して元に戻そうとする能⼒を利⽤したのが幹細胞を使った再⽣医療です。

幹細胞は、投与するとホーミング効果によって、痛みの原因となる末梢神経の炎症部位や、過敏になっている末梢神経の障害部位に集まります。直接・もしくは間接的に(幹細胞から分泌される物質により)炎症を抑え、免疫系を制御し、障害された部位を修復します。疼痛の原因となる病巣が全⾝のどの部位に存在していてもホーミング効果により治療効果が得られ、疼痛が緩和されることが期待できます。

本治療は、幹細胞の中でも、患者さまご⾃⾝の脂肪から作成される脂肪由来幹細胞を使⽤した治療です。傷ついた末梢神経を修復し、痛みの原因となる炎症を強く抑える能⼒を持つ脂肪由来幹細胞の投与により、疼痛の改善を図ります。

診察

幹細胞治療を希望される患者様は、問診をさせていただき、治療の適応があるかどうかの診断を⾏います。すでに他の医療機関で診察などを受けている場合は、その内容を伺わせていただきます。

STEP
1

治療同意

治療に適応があり医師の説明に同意いただけましたら、治療と採血のスケジュールを決定します。
採血は脂肪採取予定日の3か月~2週間前に行いますが、すでにこの期間で実施済みでしたら行いません。
※必要な検査項目を満たしているか医師に確認してください。

STEP
2

脂肪採取

患者様が希望された脂肪採取日に来院していただきます。局所麻酔を行って皮下脂肪を採取します。採取自体は短時間で終了し、入院の必要はなく日帰りで行えます。

STEP
3

細胞培養

委託先の細胞培養加工施設に採取した脂肪を送り4〜6週間培養を行います。輸送中の脂肪は専用ボックスを使用し温度管理をします。また培養期間中も状況のモニタリングや、感染の検査などを行い厳重に管理されます。

STEP
4

凍結保存

治療プランの細胞数まで培養が終わるといったん-150°の超低温で凍結保存します。

STEP
5

投与

ご希望の投与日に来院していただきます。施術は通常の点滴と同じです。
一度解凍された細胞は保存ができないため、予定日に来られない場合は細胞を破棄することになります。確実にご来院できる日を選択してください。

STEP
6

経過観察

投与後、1か月後、3か月後、6か月後を目安に痛みの評価や、画像の評価を行い治療の経過をフォローアップします。

STEP
7

自家培養上清

脂肪由来幹細胞と併せて、⾃家培養上清による治療を併せて⾏うことができます。
広く普及している培養上清は、他⼈の幹細胞を培養した際に得られた上澄み液(=他家)ですが、「⾃家」培養上清とは、「ご⾃⾝の」幹細胞を培養して作られた上澄み液です。
ご⾃⾝のものですので、「安⼼・安全」に治療を受けることができます。
培養上清には様々な成⻑因⼦(PDGF、EGF、VEGFなど)を含むだけでなく、NK細胞やマクロファージの機能を調節することによる抗炎症作⽤を有します。
幹細胞治療と併せて⾏うことで、さらなる相乗的な効果が期待できます。