関節症に対するPRP療法
PRP(Platelet-Rich Plasma)は多血小板血漿のことで、血小板を濃縮した血漿のことを指します。PRPは、関節症・関節炎への治療として非常によく研究され、その安全性と有効性が確認されている再生医療材料です。
血小板は、組織が損傷したときに、損傷した場所に集まって止血をする役割を担いますが、その際に多量の成長因子(PDGF、VEGF、FGFなど)を放出します。この成長因子は、組織修復のプロセスを開始する働きをもっています。
その能力を利用して、PRPは傷ついた組織の修復・関節症の治療に広く用いられてきました。スポーツ選手では、大リーグの大谷翔平選手や田中将大選手が肘関節の治療にPRP療法を行ったことが知られています。

関節症に対するPRP療法の効果
関節症に対するPRP療法の効果としては、以下の2つが挙げられます。
- 抗炎症・疼痛緩和:関節の変形で生じる関節炎の炎症を抑えて、痛みを緩和する。
- 変形の抑制:軟骨のすり減りなどにより生じる、変形の進行を抑制する。
PRPに含まれるサイトカイン・成長因子によって、抗炎症・疼痛緩和の効果や、関節内の環境を整える効果が期待できます。また、PRPから放出される多くの成長因子には、コラーゲンやヒアルロン酸の産生を促進する働きがあり、関節の軟骨や周囲組織の修復を促進するとされています。
PRPは、患者様ご自身の血液を採取させていただいた後に、遠心分離・加工して作成されます。わずか10-20分ほどで作成できますので、ご来院いただいた当日の投与が可能です。
当院では、「関節内PRP注射」と「関節内Super Rich PRP注射」の2つのメニューがあります。どちらも有効性が確認されているPRPを使用しますが、Super Richでは約5倍の血小板数となっており、より高い効果を期待することができます。


考えられる合併症と副作⽤(PRP治療/関節症)
・採血時:感染、採血に伴う痛み、気分不良、吐き気、めまい、失神、失神に伴う転倒、皮下出血、神経損傷(痛み、しびれ、筋力低下など)
・PRP注入時:感染、アナフィラキシー反応、穿刺部の痛み、内出⾎、神経障害(⼿⾜の痺れなど)など
幹細胞治療(ADSC:脂肪由来幹細胞)
幹細胞には、傷ついたり数が減った細胞の代わりとなり、体の機能を補ったり修復するよう働きかける能力があります。幹細胞は普段は活動していませんが、周囲の細胞から危険を知らせるシグナルを感じると細胞分裂・分化を開始し、弱った細胞の近くに集まり(ホーミング効果)修復しようとします。
また、幹細胞からはサイトカイン・成長因子・エクソソームなどの物質が多く分泌されます。投与した周囲の細胞を増やしたり、周囲の細胞の活動性を向上させる効果に加え、強力な「抗炎症効果」を有します。この幹細胞の持つ、抗炎症効果や、損傷した組織や臓器を修復して元に戻そうとする能力を利用したのが幹細胞を使った再生医療です。
関節症・関節炎において期待される治療効果は下記になります。
- 痛みの緩和、炎症を抑える
幹細胞が、炎症を抑えるサイトカインなどを分泌して、痛みや炎症が改善する。
他の治療と比べて痛みが早く軽減し、組織や臓器の修復が促され、その改善した状態を長期間維持できたという報告が、学会での発表や医学専門誌にて多数あります。 - 軟骨の再生
本来再生しないといわれている軟骨が増殖、修復される。
幹細胞自体が持つ分化能や修復を促進する効果で、障害を受けた軟骨の保護や維持に加えて、白い強固な軟骨(硝子軟骨)ができたとの報告があります。 - 運動機能の回復
痛みの緩和と同様に一時的ではなく、良い状態を長期間維持できたと報告されています。
当院では、「幹細胞治療(関節内)-Normal-」「幹細胞治療(関節内)-Rich-」「幹細胞治療(関節内)-Super Rich-」と、PRP治療を併せて行う「コンビネーション治療」のメニューがあります。
幹細胞治療においては、いずれも有効性が確認されている細胞数を使用しますが、Super RichではNormalの3倍量の幹細胞数となっており、非常に高い治療効果を期待することができます。PRP治療を併せて行うことで、治療効果を実感できる可能性はさらに高くなります。



治療の流れ
診察
ADSC治療を希望される患者様は、問診や触診などの患部の診察を行い、必要が有れば画像診断のうえで治療の適応があるかどうかの診断を行います。すでに他の医療機関で診察や画像検査などを受けている場合は、その画像(レントゲン、MRI)のデータをご用意ください。
治療同意
治療に適応があり医師の説明に同意いただけましたら、治療と採血のスケジュールを決定します。
採血は脂肪採取予定日の3か月~2週間前に行いますが、すでにこの期間で実施済みでしたら行いません。
※必要な検査項目を満たしているか医師に確認してください。
脂肪採取
患者様が希望された脂肪採取日に来院していただきます。局所麻酔を行って皮下脂肪を採取します。採取自体は短時間で終了し、入院の必要はなく日帰りで行えます。
細胞培養
委託先の細胞培養加工施設に採取した脂肪を送り4〜6週間培養を行います。輸送中の脂肪は専用ボックスを使用し温度管理をします。また培養期間中も状況のモニタリングや、感染の検査などを行い厳重に管理されます。
凍結保存
治療プランの細胞数まで培養が終わるといったん-150°の超低温で凍結保存します。凍結保存期間は2年間です。投与日に合わせて解凍し専用ボックスで輸送します。
投与
ご希望の投与日に来院していただきます。施術は通常の関節注射と同じです。
一度解凍された細胞は保存ができないため、予定日に来られない場合は細胞を破棄することになります。確実にご来院できる日を選択してください。
※投与後に一時的に痛みが出る場合もありますので、医師の指示に従ってください。



経過観察
投与後、1か月後、3か月後、6か月後を目安に痛みの評価や、画像の評価を行い治療の経過をフォローアップします。
考えられる合併症と副作⽤(幹細胞治療/関節症)
・脂肪採取時:感染、⽪下⾎腫(程度により腹部⽪膚の⾊素沈着)、創部からの出⾎、貧⾎、創部の疼痛・腫脹(はれ)、アナフィラキシー反応、腹膜穿孔など
・細胞投与時:感染、アナフィラキシー反応、穿刺部の痛み、内出⾎、神経障害(⼿⾜の痺れなど)など